第12話
『朝早くからごめんなさい、迷惑でしたか?』
瞳さんは、僕に気遣うように問いかけた、
『そんな事は無いですよ、むしろすぐに連絡貰えて嬉しいです。』
『あっ、ちょっと待ってください・・・』
受話器の向こうから、何やら騒がしい物音がする。
『ごめんなさい、私から電話したのに』
瞳さんは、申し訳なさそうにしている。
『大丈夫ですよ。』
『詳しくお伺いしたいのですが、あまりお時間がないようなので、どうでしょうか?本日どちらかでお打ち合わせのお時間を頂けないでしょうか?』
僕は、営業マンとして当然の回答をした。
『うーん、今からお仕事で、昼過ぎには終わるのでその後はどうですか?』
『了解致しました、どちらでお待合わせ致しましょうか?時間と場所は持田様に合せます』
僕の予定は、夕方から取引先との打ち合わせのみ。場合によっては日程を変更する事も可能だった。
『うーん、一緒に住む人にも聞いてもらいたいから、品川プリンスの最上階にあるラウンジに13時ではどうでしょうか?』
さすがは芸能人と思ってしまった。やはり周りの目が気になるのだろう・・・
『了解致しました・・・それでは後程・・・ガチャ』
僕は、瞳さんとの打ち合わせ時間を手帳に書き留めようと、鞄から手帳を取り出した。
手帳を開いたそのページには、結婚記念日と書いてある。
『そっか、今日は結婚記念日だ・・・』
その時、今朝の紗理奈からのメールが何を示しているのかわかったような気がした。
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