第6話
『こんばんわ』
相原の彼女と、その友達は僕たちにそう声を掛けてきた。
今どきのお洒落な二人は、すでにほろ酔いの様子だった。
相原の彼女は、自身が自慢するのも納得するほどの美人で、まるでモデルのような女性だ。
『こんにちわ、美由樹です』
僕達は自然に席に着いた。
『こんばんわ、瞳です』
一緒に居る友達は派手な感じではなく、どちらかと言うと地味な感じ、帽子を目深にかぶり、眼鏡を着けているので全体が分かりづらいが、やはり美人である。
・・・どこかで観たことあるような。
『こんにちは、俊一です』
『先輩すいません、どうしても彼女の友達が先輩に会いたがってまして』
相原は、少しにやけながら謝ってきた。
ったく、こいつは・・・
『いいよ、折角だから、今日は飲みましょ』
『乾杯!!』
相原を中心に他愛もない会話、正直僕も楽しんでいた。
しばらくすると、瞳ちゃんから声を掛けてきた。
『俊一さん、不動産屋さんですよね、実はマンションを探していまして、相談に乗ってもらいたいんです』
そういうことか、僕は相原の意図がやっとわかってきた。
『うん、いいよ。お探しは賃貸マンションかい?』
『いえ、購入を考えてます』
ん、僕は聞き間違えたのかと感じ、再度、瞳ちゃんに問いかけた。
『購入を考えているの?ご両親がかな?』
『いえ、私が考えてます。』
僕は耳を疑った、見た目は22歳くらいで、正直信用が出来なかった。
『あれぇ、先輩この子観た事ありません?結構有名じゃないですか。』
相原の彼女も僕を観ながら笑っている。
僕はハッとした、どこかで観たことあるかと思えば・・・
『すいません、全然気づきませんでした。女優の和美さんですよね』
『ハイ、結構わからないですよね』
その瞬間、帽子を取り、眼鏡を外すと、そこには間切れもなく女優の和美が居た。
束ねた髪がヒラリと広がり、ほのかに柑橘系の甘い香りが僕を包み込んだ。
『あのー、物件探してもらえますか?』
下から僕を覗き込むように問いかけてきた。
『も、勿論です。』
『良かった、二人で住もうと考えてまして・・・』
後半、彼女が何を話しているのか、まったく耳に入ってこなかった。
僕は、緊張をほぐす為に、いつも以上に飲んでしまった。
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