第5話
僕は、下北沢駅の南口にあるマクドナルドの前に到着した。
時計の針は、既に22時を過ぎている。
軽く顔合せたら、すぐに帰ろうかな・・・。
駅の方に目をやり、ぼんやりしていると相原が声掛けてきた。
『チーッス、久しぶりっすね』
何とも軽い口調だ。
『おう、元気だよ。お前は相変わらずだな』
嫌味を込めて、返事をしたつもりが相原には伝わらない。
『まじ元気です、変わらないのが僕の良い所』
自分で言っているぐらいだから、目も当てられない。
『ところで今日はどうしたんだよ、それに彼女は?』
『まっ、焦んないで下さいよ。先にお店で待っていますから、きっと驚きますよ。』
『ところで先輩は、紗理奈さんと上手くいってます?相変わらず飲み歩いてるみたいですけど。』
『アルバイト先で、一番美人でしたよねぇ、先輩がうらやましかったっすよ。』
『まっ、俺の彼女もかわいいですよ』
相原は、お店に向かう間ずっと話しかけてきた、会話が苦手な僕は、きっと彼女も大変だろうなと感じていた。
(彼女に会ったら、相原のどこが良いのか聞いてみよう・・・)
僕たちは、待合せ場所を東に向かい、パチンコ店がある交差点を右折、30mほど歩いた場所にあるビルの前に着いた。
1階にセブンイレブンが入っているビルの5階にある、イビザと言うイタリア料理のレストランに、相原の彼女は待っているとの事だった。
そのお店は、下北沢には似合わないお洒落なお店で、結婚前には、紗理奈とよくデートしたお店だ。
(・・・久しぶりだな)
薄暗い店内を奥に進み、階段を上がるとそこには二人の女性が待っていた。
彼女たちを見た僕は、ポッケトの中にあるハンカチをギュッと握りしめた。
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