第3話
僕は、まっすぐ家に帰るのを止めた。妻にはLINEでちょっと寄り道して帰るとだけ告げて、携帯電話の電源を切ってしまった。
飲みに行く時は、その時間を楽しみたくていつもそうしている、それは僕にとって当たり前の事だった。
ガラガラガラ~
『こんばんは、店長お邪魔します』
僕は、昔から通っているお店がある、そこには学生時代からずっと通っている。
三軒茶屋からバスに揺られ下北沢に向かう、自宅とは逆方向だが、今日は構わない。
下北沢のスズナリと言う、小劇場の横にある、焼き鳥屋さんだ。
『今日はひとりかい?』
『ちょっと飲みたい気分でさ』
『生ビールと焼き鳥のセット!』
元気よく声をかけると
『あいよ~』
なんとも軽い返事だ。
この店に居ると、昔の事を良く思い出す、みんなと朝まで飲んでたっけな・・・
ぷりぷりの焼き鳥が、ビールから焼酎へと誘導していく、今日も酔いつぶれそうだ・・・
他愛もない話を店長や、初めて会った隣の人などと自然と話せるこの空間が好きだった。
大分気分も良くなり、お勘定も済ませ店を後にした。
さっきまで薄明るかった空は、今にも泣きだしそうな空をしていた。
携帯電話の電源を入れ、ふと携帯電話に目をやると、見た事のない番号から留守番電話が2件も入っていた。
『誰だろうこんな時間に』
僕は何の疑う事も無く留守番電話を確認したんだ・・・
第4話へ