第2話
僕は、雨の日の満員電車は苦手だった、ジメジメとした車内の空気と、独特の匂いが苦手だった。
駅のホームまで走ったせいか、気分が悪い。僕はおもむろに持田から借りたハンカチで口をふさいだ・・・
そのハンカチは、柑橘系の甘い香りがほのかに残り、少し気分が楽になったような気がする。
ふと、さっきまで目の前に居た持田と、2年前に一緒にアルバイトをしていた持田の顔が浮かんできた。
いつ返せるか解らないけど、ちゃんと洗って返さないとな・・・
そうこうしているうちに、渋谷のホームに着いた。
一斉に人の波が押し寄せる、今度は慌てる事のなく改札を抜ける事が出来た。
渋谷の構内は、毎日賑やかだ。五反田よりも輝いている。中央改札を抜け、ハチ公前の人混みを避けるように、
地下鉄のホームに向かう、いつもと変わらない毎日だが、今日は何だかいつもと違う感じがしたんだ、上手く表現は出来ないが、
胸がざわつく感じだった事は覚えている。
地下鉄半蔵門線のホームも人で溢れかえっていた、あと数駅の辛抱、おしくらまんじゅう状態で乗車した。
急行停車駅の三軒茶屋が僕の自宅の最寄り駅だ。
三軒茶屋からは、バスに乗って家路へと向かう。
毎日の事だが、改めて感じる事がある、通勤時間は短いにこした事がないと。
満員電車から解放され、バス停に向かう頃には雨が上がっていた。
嘘のように空が明るく、ほんのり月が見える。
少し、寄り道して帰ろうかな・・・
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